单选题
もう20年近く、会社の採用面接に関わってきた。採用する側としてある意味では強い立場でお会いしているわけで、気づかないうちに失礼な言動がなかったかどうかと一抹の不安がいまに残る。 ある年のことであった。言葉数はかならずしも十分とは言えなかったが、( 51 )自分の思っていることはしっかりと表現できるという感じの、腰の据わった男が地方から上京して試験を受けた。大体においてこういう男は評価される。比較的に和やかな雰囲気のうちに面接が進み、何気なく「お父さんと就職のことなどでいろいろ相談したりしますか。よく話し合ったりしますか」という質問を面接官の誰かがした。 52彼はしばらく考えた後で、「いいえ、話し合いません」ときっぱりとした感じで答えた。どうしてなのか、一瞬、面接する側の何人かが注意を集中する空気になるのが分かる。 親子の間に断絶があるのか、そういう人間関係をつくってしまう要素が彼の側にあるのか。こういう時にわれわれが発動させる想像力というのは大体そういったものだ。 彼は、どういう言葉で自分の思いを表すべきかずいぶん考えた後で、ほとんどぽつんという感じで「なぜかというと、父はとても無口なんです」と答えた。かすかな笑い声とともに、53ほっとした空気がその場を支配した。 「面接学」という研究分野は小さいが、様々な研究成果が発表されている。たとえば、「採用しよう」とか「やめよう」とかいう一人の面接官の内部での心象が固まるのが、面接をはじめてからほぼ3分以内であるという測定的な事実が発見されている。 また、その心象を決める決定的な要因は、どうも「話されている言語的な内容」ではなく、顔形や服装、態度、ものごし、口の利き方、言葉の使い方、表情といったような「非言語的な情報」の方にあるらしいということも分かってきている。 多分、人が面接という場面で( 54 )露出しているものは、驚くほど深くまた広いのである。 画家が持てる感性のすべてを一幅の絵画に凝縮させるように、われわれは55自分が経験してきた時間のすべてのエキスのようなものをわずかな時間の間に期せずして表現しているのだ。男の顔は履歴書であるという本当の意味はそのあたりにある。 面接のノウハウという言葉はだから意味をなさないのである。 注:腰が据わる/不慌不忙 ぽつん/冒出一句 エキス/精华55.「自分の経験してきた時間のすべてのエキスのようなもの」とあるが、それは何か。无