[三]
今年は海外で年末年始をすごした。そこには紅白歌合戦もなければ、大晦日の夜の鐘の音も聞こえてこなかった。そこで、今回は日本と欧米との年の区切りのちがいば かりが、気になった。
そのもっとも大きかったことは、日本の年末年始が、大晦日に大きな意織があって、 新年は、どちらかというと、次のものであることだった。
日本人は年末年始が近づくと忘年会をやる。過去を捨てようと、一生懸命である。 また大晦日の終曲は、まだまだ紅白歌合戦である。何しろ、出場できなかった女歌手 が、人気回復に特別な写真集を出すほどらしい。そんな記事を週刊誌で読んだ。
そして大晦日の夜の鐘の音。この喑い感じは、どうも好きになれない。
ところが今回年末をすごした所では、新年を迎えて、海上の空に花火が打ち上げら れた。まあまあの豪華さだった。
つづいて爆竹。これも長い時間鳴りやまなかった。
もちろん世界各地、海外といったって同じではあるまい。爆竹は中国の旧暦の区切 り、いわゆる春節ではそれはそれは大変で、毎年けが人が出る。むかし北京で春節を 迎えた時の騒ぎは、今でも忘れられない。
また大晦日のカウントダウン(倒计时)は欧米にもある。とくにヨーロッパの田舎では 12時のキスは、今でもあるらしい。
しかしそれにしても、欧米では忘年会にあたる英語はないし、クリスマスの飾りは クリスマスが済んでもそのままお正月に入るから、街の風景は変らない。それでこそ 欧米人から来るカードに「クリスマス、おめでとうございます!新年、おめでとうご ざいます!」と書いてあることも納得できる。
やはり重点の置き方はヨーロッパとアジアで違い、さらに中国と日本でも違って、 日本はいちばん、ゆく年に重きがあるように思える。
一年間の反省や勘定の清算も大いに結構だが、どちらかといえば、もっと前向きに 年のあらたまったことの方を大事にしたいと思うが、どうであろう。
とくに近ごろ、日本人は景気が悪くて元気が出ない。そんな時は忘年会をやめて新 年会だけにしよう。
お釈迦さま(佛祖)にお許しいただいて、大晦日の夜の鐘を適当にして新春の餅をつこ う。紅白歌合戦は「明けましておめでとう」を強調したものを、年が明けてからやろ うではないか。
そして新年の日の出や初詣出(新年初次参拜)に出かけもするし、テレビやラジオも、 熱心にそれを放送してほしい。
これが私の新年の夢である。





