次の和歌を現代日本語に訳しなさい。
花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし まに
(小野小町古今集卷二春下·一一三)
桜の花の色は、むなしく衰え色あせてしまった、春の長雨 が降っている間に。ちょうど私の美貌が衰えたように、恋や世間の もろもろのことに思い悩んでいるうちに。
花の色:「花」とだけ書かれている場合、古典では「桜」を意味す る。「桜の花の色」という意味だが、ここでは「女性の若さ・美し さ」も暗示している。
うつりにけりな:動詞「うつる」は花の色のことなので、「色あせ る・衰える」というような意味です。「な」は感動の助動詞で、 「色あせ衰えてしまったなあ」という意味になります。
いたづらに:「むだに」や「むなしく」という意味で形容動詞「い たづらなり」の連用形。
世にふる:ここでの「世」は「世代」という意味と「男女の仲」と いう2重の意味が掛けてある掛詞。さらに「ふる」も「降る(雨が 降る)」と「経る(経過する)」が掛けてあり、「ずっと降り続く 雨」と「年をとっていく私」の2重の意味が含まれている。
ながめせしまに:「眺め」は「物思い」という意味と「長雨」の掛 詞で、「物思いにふけっている間に」と「長雨がしている間に」と いう2重の意味がある。さらに「ながめせしまに我が身世にふる」 と上に続く倒置法になっている。