[一]
わたしはこれまで、人間についで頭がいいのはチンパンジーだと思っていましたが、 イルカ(海豚)はチンパンジーとは段違いに優秀なのだそうです。
そして、わたしたちがチンパンジーを高等動物とみなすのは、その形態が人間に近 いからなのですね。なんという自己中心!すべての動物は人間にどれだけ近いかによ って優秀の順位が決まると、最初から思い込んで疑わなかった。これはイルカに対し てまことに失礼なことであったと反省したことでした
すると、たとえば、音楽を聞かせたら、植物の育ちがよかったり、いい花を咲かせ た、という話も、ほんとうだろうという気がしてきます。枝を切ろうとしてハサミを 手にその木へ近づいていくのと、水をやろうとジョウロ(喷壶)を持って近づくとでは、 木はまるで別の反応の仕方をするのであって、ただそれが人間には見えないだけなの かもしれない。
人間はものを見るのに目を使い、聞くのは耳で、嗅ぐのは鼻です。(ア)、たと えば魚に対すると、魚の耳はどこだと考え、メクラウオのように、目が退化して形だ け残っている種類を見ると、びっくりしたりします。
もっとも、人類はそれほど自己中心的で、かつ攻撃性を備えていたからこそ、地球 という星で、こんなに栄えたというか、蔓延ったわけでしょう。というのも、地上は 酸素はたくさんあるけれど、食物を手に入れるのが海の中とは比べ物にならないくら い困難で厳しいので、地上の生物たちは、そのための大変な努力をしながら今日に至 った。そして人類は、今のところそれに勝ったのだと言えます。
その点、イルカは5千万年ほど前に、やはり海の中がいいからと、海へ帰っていっ たが、海の中は、ほとんどといっていいほど敵はいなくて、口を開けて泳げば餌がひ とりでに入ってくるから、まず努力しなくていい、毎日遊ぶことが仕事みたいなもの です。もしイルカが努力をしていたら、人類は今みたいに栄えなかっただろうという ことです。
よく言われることですが、「地球」という呼び方も、いかにも人間中心的ですね。 「地球」というより「水球」といえ、とイルカたちが主張したら、われわれは言い返 すことができません。表面積からすれば、海はその 70.8%を占めるのですから。





