41. わが家の北側の窓からは、 盆地を囲むなだらかな山々がのぞめる。 山々の緑のさまざまな色合いや、 夕焼けや宵闇の中の山々の輪郭は、 いつ見ても飽きない。
しかし、 最近は、 その楽しみが半減した。 宵闇の中の山の輪郭がぼやけてしまったのである。 山の斜面にあるゴルフ場がナイ ターを始め、 夜になると 照明をこう こう と 照らして、 あたり 一面の闇を追いはらってしまったからだ。
42. もっと も、 電灯の普及によって、 われわれの生活には、 まったく の闇はすでにない。 都市の夜道は、 街灯や家々の明かり によって、 真っ暗ではない。
43. 以前、 人里離れた夜道を、 新月 のと きに歩いたこと がある。 そのと き、「あ、 これが暗闍と いう ものか」と 、 体の底から納得した。 都市で生まれ育った者にと っては、 貴重な経験だった。
そのと きほどの完全な闇ではないが、 都市の生活でも、 以前は、 時々、 闇と 出会う こと もあった。 町中が停電してしまう と きなどがそう である。 停電の暗闇の中で、 ろう そく のほのかな明かり がと てもたのもしく 思えたものである。 停電と いう 、 いやおう なしの闇の中で、 われわれは闇の根源的な力、 不思議な懐かしさをほのかに感じたり もした。
今、 町は深夜になっても何らかの光によってほの明るい。 ナイ ター・ ゴルフ場の異様な明るさ以外にも、 24時間営業のコンビニエンス・ ストアはこう こう と した照明をドアからあふれさせている。
44. ヨ ーロッパの都市にならって、 閉店後もショ ーウィ ンドーを明るく しておく 店がふえたし、 街路や建築の夜間照明などもさかんだ。 夜の町はますます明るく なっている。
45. しかし、 町は明るければ明るいほどよい、 と いう ものでばないだろう 。 夜の闇を確保しておく こと には、卖なる省エネルギーと いう 効果だけではない、 もっと 奥深い意味があるよう に思える。
从我家的北边窗户可以遥望到环抱着盆地的平缓山丘, 山上深浅不一的绿色、 夕阳, 以及黄昏中山丘的轮廓,永远也看不够。
(「なだらか」 坡度小, 不陡。「飽きる」 厌烦, 腻烦。)
不过由于电灯的普及, 在我们的生活中已经没有完全的黑暗了。 城市的夜间道路因为有路灯和家家户户的灯光, 并不黑暗。
(「もっと も」 在这里意为“不过, 可是”。「~によって」 在这里表示原因, 意为“因为, 由于”。)
以前, 我曾在一弯新月当空的时候, 走过远离村落的夜路。 那时我切实体会到:“啊, 这就是黑暗吗? ” 对于生长在城市的人来说, 这是宝贵的经历。
(「~たこと がある」 曾经......过。)
向欧洲的城市学习, 关门后橱窗仍旧灯火辉煌的店铺逐渐增多, 路灯和建筑物的夜间照明等也彻夜不息。 夜间的城镇, 愈发明亮。
「~にならう 」 向......学习, 仿效......。「ますます」 越发, 愈发。)
但是, 城镇并非越明亮越好。 确保夜间的黑暗, 并非仅仅是节能的效果, 可以认为还有更为深刻的意义。
(「~ば~ほど~」 越......越......。「~ておく 」 表示采取某种行为, 并使其结果的状态持续下去。「卖なる~だけではない」 不仅仅是......, 不只是......。)