「人類を愛する こ と は やさ し いが、 隣人を愛する こ と は 難し い。 」
こ れは 来日し たソ 連の反体制物理学者サハロ フ博士が、 ロ シアの詩人の一節（1） 引用し たも のである 。 私は それを読んで、 長年感じ てい たこ と が、 みごと に要約さ れている （2） がし て、 （3） 。
自分は 人類を愛し ている 、 と 思い込むのは （4） 。 各種のボランティ ア活動や寄付、 献血、 署名、 投書などを少し し ただけで、 そのよ う な幻想に（5） のである 。 一方、 隣人を愛する のは 、 その人が自分と （6） 人や利害が一致する 人なら やさ し いが、 そう でない場合は たい へん難し い。 その代表的な例が嫁と 姑であろう 。
なぜ難し い（7） 、 その隣人は こ と ある ごと に自分を不快にする から である 。 そし て、 （8） その隣人から 離れたく ても 、 毎日顔を合 わさ ざる を得ないから である 。 一方「人類」 は そばにいる わけでは ないので、 自分を怒ら せたり は し ない。 忘れたければ、 忘れてし ま えば、 それ でいい。 好き なと き に思い出せばいいのだ。 「人類」 は 自分にと っ ては なは だ（非常） 都合のいい存在なのである 。 こ う いう 「人類」 を愛する の は （9） たやすい。
私は、 う ま のあわない（合不来） 家族に懸命につく し ている 人や、 （10） 近所の人や職場の人と も う ま く やっ ていこ う と 努力し ている 人 を見る と 本当に偉いと 思う 。 その人たちは 涙を流し たり 、 歯を食いし ばっ たり し ながら 、 隣人愛を実行し ている のだ。 し かも 普通そう いう 人たち は 自分が立派なこ と をし ている と は 特に思っ ていないし 、 自分の行為を声高に宣伝し たり も し ない。 （11） 、 世間に注目さ れる （ 12） も ない。
一方、 「人類愛」 は 、 涙を流さ なく ても 、 歯を食いし ばら なく ても 、 実行でき る 。 し かも 「人類愛」 は スケール（规模） が大き く 、 周囲から 注目さ れ、 賞賛さ れる 機会も ある ので、 自分は 高級な人間なのだと いう 優越感ひたる こ と も でき る 。 そのう え「人類愛」 を実践し ない人や、 広い 視野をも たない人を批判する 資格をえたよ う な気持ちにも なれる 。 （13） 自分が隣人愛を実践し ていなく ても 、 「人類愛」 を実践し ている の だと いう 自負がある ので、 さ ほど（并不那么） 気になら ない。
だが、 人類愛も 隣人愛も 結局は 一つのも のであり 、 優劣を論じ る こ と などそも そも 無意味なのだ。 隣の奥さ んも 、 遠い外国の難民と 同様人類 の一部である 。 隣人と いう 人類の一部を愛さ ない人類愛などがある だろう か。 隣人愛と いう 難し い愛の実践を欠いた人類愛ほど空し いも のは な い。 それは 結局、 どんな愛情も も っ ていないと いう こ と の証明に過ぎないのである 。

（荻野誠人「人類愛と 隣人愛」 よ り ）

（1） ～（13） にイ 入れる のにも っ と も 適切なも のは どれか。

文中の「も の」 と 同じ 使い方のも のは どれか。

文中の「てし ま えば」 の「てし ま う 」 と 同じ 使い方のも のは どれか。

文中の「ながら 」 と 同じ 使い方のも のは どれか。

文中の「注目さ れる 」 の「さ れる 」 と 同じ 使い方のも のは どれか。

文中の「ほど」 と 同じ 使い方のも のは どれか。

文中の「幻想」 の読み方は どれか。

文中の「優劣」 の読み方は どれか。