阅读理解

[二]

  ふとしたことから、五線紙の上に音符を書いたり消したりしなければならないことになり、ほんとうにひさしぶりで鉛筆を削ることになりました。何十年かぶりに机の引き出しの奥から出てきたナイフは、なんとなくよそ行きの顔をしていましたが、すぐに私の手に馴染んでくれて、その感触は、戦後まもなく、やっと手に入れたドイツの鉛筆を削った時のことを思い出させてくれました。それから、半世紀あまり、いまや国産の鉛筆や消しゴムは世界一の性能を誇るまでになりましたが、現代の私たちの日常生活を支えている筆記用具の主流はボールペンです。実用性能から見れば、ボールペンやサインペンのメリットには計り知れないものがありますが、それまでも万年筆のペン先や鉛筆がもつしなやかな弾力感には魅力を感じています。考えてみれば、何事もスピートと効率優先の現代においては、あらゆるものが道具というより、用具になってしまっているようです。筆記用具といえば、書き味ということよりも、物理的に書くという機能を最優先して、行き着くところは、使い捨てというゴールです。

  ところで、今、私が使っている腕時計は40数年前に購入した昔ながらの発条時計、そろそろ分解掃除の時期になったので、先日、今では数少なくなった発条時計の修理ができる職人さんのところに行ったときのことです。時計を預けてから、売り場の間をすり抜けながらエレベーターホールまで歩いて、何気なく時計売り場の方を振り返ると、そこにはさきほどの職人さんが、私の姿を追うように立ったまま見送っていました。それは、私の歩き方のくせを観察することによって、使用者に合わせた調整をするためだったと後で聞いてびっくり、なるほど、これが一流職人魂というものかと感動しました。水晶の物理の振動を利用することによって、使い手のくせなどには影響されず、ひたすら正確な時を無機的に刻み続ける次代のクオーツ時計(石英表)とは対照的な風景でした。

  カメラであれ、自動車であれ、あるいは鉛筆であっても、それらの役目が与えられた機能を果たすことだけにとどまらず、それを使うこと自体が、そのまま「愛でる」ということにつながった時、用具は道具になるといってもいいでしょう。この忙しい時代にあって「愛でる」という感覚だけで物品を使用していては、時代のテンポについていけないのは当然ですが、たまには特急よりも各駅停車のように、時を少しだけ止めて、沿線の風景を眺めて見ることも必要かもしれません。

  ペン先でも鉛筆でも、摩耗するということは、成熟へのプロセスであると同時に、終焉へ向かうプロセスでもあります。だからこそ、この相反する性質が共存しているあらゆる瞬間が意味をもつのでしょう。人生でいえば、それぞれの年代には、その時にしかない意味とすばらしさがあるということです。

单选题

文中に「なんとなくよそ行きの顔をしていました」とあるが、筆者がそう感じた理由はどれか。

【正确答案】 A
【答案解析】
单选题

中に「あらゆるものが道具……用具になってしまっている」とあるが、「道具」と「用具」の違いはどこにあるか。

【正确答案】 B
【答案解析】
单选题

文中の「それ」は、何を指すか。

【正确答案】 B
【答案解析】
单选题

文中の「対照的な風景」とは、どんなことを言っているか。

【正确答案】 B
【答案解析】
单选题

文中に「この相反する性質が……意味をもつ」とあるが、その説明として、筆者の考えに合っているものはどれか。

【正确答案】 A
【答案解析】