次の古文を現代日本語に訳しなさい。
徒然草第十九段徒然草(吉田兼好著)
七夕祭るこそなまめかしけれ。やうやう夜寒になるほど、雁鸣きて くる比、萩の下葉色づくほど、早稲田刈り干すなど、とり集めたる 事は、秋のみぞ多かる。また、野分の朝こそをかしけれ。言ひつで くれば、みな源氏物語、枕草子などにこと古りにたれど、同じ事、 また、いまさらに言はじとにもあらず。おぼしき事言はねは腹ふく る、わざなれば、筆にまかせつつあぢきなきすさびにて、かつ破り 捨つべきものなれば、人の見るべきにもあらず。
さて、冬枯のけしきこそ、秋にはをさをさ劣るまじけれ。汀の草に 紅葉の飮り止まりて、霜いと白うおける朝、遣水より畑の立つこそ をかしけれ。年の暮れ果てて、人ごとに急ぎあへるころぞ、またな くあはれなる。すさまじきものにして見る人もなき月の寒けく澄め る、廿日余り空こそ、心ぼそきものなれ。御仏名、荷前の使立つな どぞ、あはれにやんごとなき。公事ども繫く、春の急ぎにとり重ねて催し行は る、さまぞ、いみじきや。追儺より四方拝に続くこそ面白けれ。晦 日の夜、いたう間きに、松どもともして、夜半過ぐるまで、人の、 門叩き、走りありきて、何事にかあらん、ことことしくの、しり て、足を空に惑ふが、晚がたより、さすがに音なくなりぬるこそ、 年の名残も心ぼそけれ。亡き人のくる夜とて魂祭るわざは、このご ろ都にはなきを、東のかたには、なほする事にてありしこそ、あは れなりしか。
かくて明けゆく空のけしき、昨日に変りたりとは見えねど、ひきか へめづらしき心地ぞする。大路のさま、松立てわたして、はなやか にうれしげなるこそ、またあはれなれ。
七夕祭はなまめかしさがある。少しずつ夜が寒くなり、雁が鳴いて いる頃には、萩の下葉は色づくほどで、早稲(わせ)の稲刈りをし て干している。取り集めて語りたい事は、秋に多いものだ。また、 風が吹く明朝こそ、情緒的な趣きがある。言い続けられていること は、みんな源氏物語・枕草子などで使い古されてるのだが、同じことを、もう一度また言えないという事もないだろう。思ったことを 言わないのは腹がふくれるような感じがすることだから、筆に任せ ながらの他愛のない遊びなので、すぐに破り捨てたほうが良いもの である。人に見せるような価値はない。
さて、冬枯れの景色というのも、秋に少しも劣らないものだ。水辺 の草に紅葉は散り落ちており、霜がとても白く降りている朝には、 庭の小川から湯気立つのが興味深い。年も暮れて、人々が急ぎ合っ ている時期には、また何となくしみじみとした気持ちになる。もの 寂しいと決め込んで見る人もない月は、寒々として澄んでいる。20 日あたりの空というのは、心細さ・寂しさを感じるものである。懺 悔・滅罪のための仏名会や朝廷の勅使の出発は、趣深くて尊いもの である。公の行事が多くて、新春の準備と重なって、行事が行われ ている様子はとても大変である。大晦日に鬼やらいをし、すぐに一 般参賀が続くのも面白い。追儺(鬼やらい)の儀式から四方拝へと 続く時期が興味深い。晦日の夜はとても暗いのに、松明をともし て、夜半が過ぎるまで、人の家の門を叩いて走り回って何事なのだ ろうか。物々しく罵り合って足を空にぶらりとさせている。明け方 から、さすがに静かになってくるが、一年を名残惜しく振り返るの は心細いものだ。亡くなった人の訪れる夜として魂を祭る行事は、 最近の都では見なくなったが、日本の東方では、今でも行っている 所もある。その魂をお祭りする行事は、とても情趣豊かなものでは ないだろうか。
このようにして明けていく空の景色は、昨日から変わっているよう には見えないが、珍しい感じがする。都の大路の様子は、松を多く 植えていて、華やかで気分が晴れやかであり、また趣き深いもので ある。
けれ:过去、回想助动词「けり」的已然形。
やうやう:相当于现代日语中的「だんだん」「次第に」。
たる:完了助动词「たり」的连体形。
多かる:「多し」的补助活用的连体形。
野分:秋に服激しい風。台風。
けれ:过去、回想助动词「けり」的已然形。
こと古り:ラ变上二段动词「こと古る」的连用形。相当于现代日语中的「言い古される」「事柄が古くさくなる」。
にたれ:完了助动词「ぬ」的连用形「に」加上完了助动词「たり」的已然形「たれ」。
ど:表示逆接的确定条件,相当于现代日语中的「…けれども」「… のに」「…だが」。
言はじとにもあらず:四段「言ふ」的未然形加上打消意志助动词 「じ」的终止形加上格助词「と」加上断定助动词「なり」的连用形 「に」加上系助词「に」加上ラ变辅助动词「あり」的未然形「あら」加上打消助动词「ず」,相当于现代日语中的「言うまいというわけでもな い」。
おぼしき:形容词「おぼし」的连体形,相当于现代日语中的「こうあ りたいと思う」。
ね:打消助动词「ず」的已然形。
わざ:在本文中的意思是「ありさま」「事態」「物事」。
あぢきなき:形容词「あぢきなし」的连体形,相当于现代日语中的 「かいがない」「無益だ」。
すさび:写成「遊び」
にて:格助词「に」加上接续助词「て」,本文中的意思相当于现代日语中的「…のために」「…によって」。
をさをさ:是个副词,相当于现代日语中的「少しも」「めったに」。
まじ:表示打消推量的意思,相当于现代日语中的「…そうもない」 「…ないだろう」
急ぎあへる:四段动词「急ぎあふ」的已然形加上完了助动词「り」的连体形。
またなく:またなし的连用形,相当于现代日语中的「またとない」 「二つとない」。
あはれなる:形容动词「あはれ」的连体形,意为「じみじみと心を動 かされる」「じみじみとした情趣がある.美しい」。
すさまじき:形容词「凄まじ」的连体形。
心ぼそき:形容词「こころぼそし」的连体形,相当于现代日语中的 「心細い」。
なれ:断定助动词「なり」的已然形。
荷前の使:毎年,旧暦十二月に,「荷前」を奉納するために,朝廷から伊勢神宮や諸陵墓などに派遣された勅使。
やんごとなき:形容词「やんごとなし」的连体形,等同于「やむごと なし」。
あはれに:形容动词「あはれ」的连用形,意为「じみじみと心を動か される」「じみじみとした情趣がある.美しい」。
いみじき:形容词「いみじ」的连体形,意思相当于现代日语的「甚だ しい」「なみなみでない」。
追儺:大晦日、宮中で行われた鬼やらいの行事。
いたう:形容词「いたし」的连用形「甚く」的ウ音变,相当于现代日语中的「ひどく」「非常に」。
らん:推量助动词
ぬる:完了助动词「ぬ」的连体形。
心ぼそけれ:「心細し」的已然形。
とて:格助词「と」加上接续助词「て」,相当于现代日语中的「…とし て」「…といって」。
ありし:ラ变动词「有り」的连用形,后接过去动词「き」的连体形 「き」,相当于现代日语中的「もとの」「昔の」「生前の」。
あはれなり:形容动词「あはれ」的连用形,意为「じみじみと心を動 かされる」「じみじみとした情趣がある.美しい」。
しか:是终助词,表达自己的愿望,相当于现代日语中的「…たいも のだなあ」。
かくて:相当于现代日语中的「このようにして」「こうして」。
たり:完了助动词「たり」的终止形。
ね:打消助动词「ず」的已然形。
「ど」:接续助词,表示逆接的确定条件。
ひきかへ:是副词,相当于现代日语中的「うって変わって」「すっか り変わって」。