完形填空次の文章を読んで、1~20 の問いに答えなさい。答えは選択肢 [A][B][C][D] から もっとも適切なものを1つ選びなさい。突然、警察官(1)「話を聞かせてください」と呼び止められたらどうするべ きか。裁判官や弁護士として、多くの刑事事件にかかわった経験からいうと、任意同 行は断ったほうが身のためだ。任意同行とは、警察などが捜査上必要な場合、被疑者 に警察署等へ任意に同行し(2)ことである。警察官は警察官職務執行法第2条(3)、停止させての質問や警察署などへの 同行を求めることができる。しかし同条3項(4)、本人の意に反して連行でき ない旨が定められている。つまり法的には逮捕されない限り、任意同行を拒否しても 問題はないのだ。特に任意同行(5)警察署に入った場合は、実質的に身柄を拘束されて、自由 を失う危険がある。裁判官時代、任意同行で警察署に連れてこられた人が、尿検査の 結果、覚醒剤(兴奋剂)の反応が出る起訴された事件があった。警察官は任意だと主張し たが、数時間にわたり取り調べを受け、トイレにも行かせてもらえず、逮捕と同じ扱 いを受けてしまう。任意と言いながら強制的に捜査をするのは違法であり、私は違法 収集証拠だとして尿検査の鑑定書の証拠申請に許可を出さなかった。しかし、これは 稀な(6)だ。裁判官の多くは警察の主張を信用し、証拠申請を認めてしまう。事件とはまったく無関係の人が、任意である(7)違法な取り調べを受け、自 白を強要されて冤罪事件へ発展する場合もある。警察署の中に一度入れば、あとは密 室。違法な取り調べがあっても、それを後で証明するのは難しい。逆に実質的に任意だったのに後から逮捕が「つくられる」こともある。痴漢事件で は、ホームで女性に呼び止められ、警察官に同行して警察署に行くと、そのまま拘留 されることが多い。拘留の前には逮捕行為が必要で、任意ならいつでも帰られる。と ころが、捜査機関は拘留の(8)、書類上「女性が現行犯逮捕して警察官に身柄 を引き渡した」ことにする。実際は逮捕行為がなかったのに、いつのまにか逮捕され たことになっているのだ。このように、警察は「任意」を拡大解釈して、(9)強制力があるかのように装い、より違法性の高い捜査を行う場合がある。違法捜査から身を守るには、明確に 逮捕されたのではない限り、任意同行は拒否したほうがいい。搜査協力するにしても、 警察署には行かず、こちらで場所と時間を指定して話すべきだ。自宅に押し掛けられ ても入れてはいけない。別件逮捕の口実を与える(10)、何もいいことはない。任意で行われる職務質問も同様。下手に応じてカバンの中を見せると、「ペンライ トは窃盗の道具に転用できる」「登山用ナイフは銃刀法違反」などと、犯罪に無理に 理屈づけて余計なトラブルを背負い込まされる。肩がぶつかっただけでも逮捕されか ねない。押し問答はやめて、「任意ならお断りします」と簡潔に告げて立ち去ったほ うがいい。(1)~(10)に入れるのにもっとも適切なものはどれか。
完形填空次の文章を読んで、1~ 20 の問いに答えなさい。答えは選択肢 [A][B][C][D] からもっとも適切なものを1つ選びなさい。松の樹に囲まれた家の中に住んでいても松の樹の根が地中でどうなっているかはあ まり考えてみたことがなかった。美しい赤褐色の幹や、わりに色の浅い清らかな緑の 葉が、永いなじみである松の樹の全体であるような(1)。雨が降ると幹の色は しっとりと落ちついた潤いのある鮮やかさを(2)。緑の葉は涙に濡れたような 可愛らしい色艶を(3)。雨のあとで太陽が輝き出すと、早朝のような爽やかな 気分が、樹の色や光の内に漂うて、いかにも朗らかな生の喜びがそこに躍っているよ うに感じられる。時々かわいい小鳥の群れが(4)声で囀り交わして、緑の葉の 間を楽しそうに往き来する。――それ(5)私の親しい松の樹であった。ところが、ある時、私は松の樹の生い育った小高い砂山を崩している所(6) 足を止めて、砂のなかに深く入り込んだ複雑な根を見まもることができた。地上と地 下の姿が何とひどく相違している(7)であろう。一本の幹と、簡素に並んだ枝 と、楽しそうに葉先をそろえた針葉と、――それに比べて地下の根は、戦い、もがき、 苦しみ、精いっぱいの努力を(8)ように、枝から枝と分かれて、乱れた女の髪 のごとく、地上の枝幹の総量よりも多いと思われる太い根細い根の無数をもって、一 斉に大地に抱きついている。私はこのような根が地下にあることを知ってはいた。しかしそれを目の前にまざま ざと見たときには、思わず驚異の情に打たれぬわけにはいかなかった。私は永いなじ みの間に、このような地下の苦しみが不断に彼らにあることを、一度も自分の心臓で 感じたことがなかったのである。彼の苦しみの声を聞いたのは、時折に吹く烈風の際 であった。彼の苦しそうな顔を見たのは、湿りのない炎熱の日が一月以上も続いた後 であった。しかしその叫び声やしおれた顔も、その機会さえ過ぎれば、すぐに元の快 活に帰って苦しみの痕を(9)あとへ残さない。しかも彼らは、我々の眼に秘め られた地下の営みを、一日も怠ったことがないのであった。あの美しい幹も葉も、五 月の風に吹かれて飛ぶ緑の花粉も、実はこのような苦労の上に(10)可能なので あった。この時以来私は松の樹だけではなく、(11)植物に心から親しみを感ずるよう になった。彼らは我々(12)生きているのである。それは誰でも知っていること だが、私には新 しい事実としか思えなかった。(1)~(12)に入れるのにもっとも適切なものはどれか。
